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50周年記念公演 藤原正彦先生

2013.11.09

50周年記念公演 藤原正彦先生

 

11月13日(水)

武南学園創立50周年記念講演に

お茶の水大学名誉教授 藤原正彦先生をお迎えし

 

『日本のこれから、日本人のこれから』

 

という題目で講演して頂きます。

 

藤原先生は、数学者である傍ら、数多くの書籍を世に出されてきました。その中でも『国家の品格』は一世風靡したベストセラーなのできっと、みなさんの家の本棚にもあるかもしれませんよ。是非、読んでから先生の講演に耳を傾けたらどうでしょうか。

 

先生の作品の中に、『若き数学者のアメリカ』という、先生がアメリカ留学をされていた時の様子をまとめた作品があります。これから海外を目指すみなさんには、こちらもオススメです。もう40年前のアメリカの様子が描かれているのですが、異国の地で成長していく若き日の先生の姿は、とても参考になると思います。

 

少し本のさわりをお話します。

 

1972年 アメリカに初めて渡った先生は

その雄大な景色を目の当たりにし、

日本と比べてこんなことをおっしゃいます。

 

<抜粋>

アメリカにも日本と同様に、

美しい物はいくらでもあった。

グランドキャニオンの壮大な美しさ。

ミシガン北部の紅葉の見事さ。

無数にある湖の水の青さ。

地平線にゆっくりと沈む夕陽。

どれも美しいと思った。

絵として見たら

日本のものより数段上と思われるものもあった。

しかし、不思議なことに、

感動したことは一度もなかった。

「優しさ」を目覚めさせてくれることは

決してなかった。

 

 

人間は、少なくとも自分は、

何に対して「優しさ」を持つのだろうか。

どんな美しさを前にして感動するのだろうか。

 

「アメリカには涙がない。」

 

ということに思いいたった。

 

モウハーヴィ砂漠にも、

湖の青い水面にも、

壮大なグランドキャニオンにも、

どこにも涙がなかった。

土壌に涙がにじんでいなかった。

 

私は日本で美しいものを見ても、

それが単に絵のように美しかったから

感動していたわけではなかったらしかった。

その美しさは常に、

昔からの数え切れない人々の涙が

実際にあるいは詩歌などを通して

心情に滲んでいた。

飛鳥の里で、

変わりばえのしない田の畦道を歩きながら、

何故に私は胸を熱くしていたのか。

 

私は、涙をその風景の中に、

足下の土壌に、

辺りを包む光と空気の中に、

瞬間的に感知し、

感動していたに違いなかった。

 

「アメリカには涙がない。」

先生はアメリカの景色を見てそうおっしゃいました。そして、アメリカ生活も3年経ち、帰国を決心した中で、同じ熱風の吹きまくる灼熱の地モウハーヴィ砂漠を貫く道を車を走らせながら先生こう語られています。

 

<抜粋>

赤い地平線に這いつくばったまま動こうともしない長い長い一本道が、彼らの、そして私の、歩みつつある道のように思えた。この道を蜃気楼のような理想を夢見ながら、逃げ水という幸福に裏切られながら人は歩み続ける。夏の灼熱の中を、冬の吹雪の中を、ただひたすら歩み続ける。そして、いつか夢は破れ、幸福を失い、倒れていく。この道は涙の道である。そして、他に道はない。

私は焼けつくような夏の太陽を露出した左腕に烈しく感じながらそう考えていた。アメリカ人が、日本人が、そして誰もが歩み一本道。歩まざるを得ない一本道。この道は愛なしには歩けない。愛なしには決して…。こう思った時、道は不意にぼんやりとにじんだ。

 

 

同じ景色も3年間の体験、

出会いで違って見えたようですね。

こういう体験をすることが

若い時期には必要なことなんだと思います。

 

<抜粋>

愛なしで人間は人間であり得ない。

人間は、

その心の最も奥深い部分を通わすことの出来る

「何か」が必要だ。

その「何か」は人でも物でも何でもよい。

それが愛ではないだろうか。

私はそう思った。

 

先生の講演を楽しみにしながら、

もう一度、読み返してみました。

最高の講演会になりますように…。

 

 

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