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幸運の雨

決勝レース前、
緊張する選手達をにわか雨が襲います。
突然の雨で関係者、応援していた人たちは、
みな、ひさしのあるところへ避難します。



身体を冷やさないようにアップする選手達
そんな彼らのすぐ脇で
ひとり傘もささずに立つ人がいます。
それが武南陸上部顧問、尾花伸という男です。

号砲とともに選手達が一斉にスタート
前半、内山くんは好位置につけ走ります。

８００メートルの場合、
試合中後ろを確認することはできません。
集団の中で、一瞬、彼は自分のポジションを見失いかけます。

…が、
その時、
降りしきる雨の中でも
彼ははっきりと尾花先生の指示を耳にすることができたのです。

この雨は幸運の雨

雨で多くのコーチがグランドから一歩離れたところにいたため
尾花先生の声だけが彼の耳によく届き
彼の背中を押したのです。

そこから、内山くんのギアが入ります。
グングン加速しすばらしいレースを繰り広げ
６００メートルではついに先頭に立ち

“優勝できるかも？”

彼も先生もそう思ったそうです。



最後は自力にまさる選手に抜かれはしましたが、
見事な作戦勝ちとなるレースができました。

レース前のベスト記録だけを見れば６位…と思われた彼が
表彰台にあがることができたわけです。



一番小柄で、一番かわいい笑顔をしてるのが内山くんです。

内山くんから、こんなステキな話を聞けて
また武南陸上部が好きになりました。



体育祭のリレーのアンカーでみせてくれた
内山くんの全力疾走…青春…っていいものですね。